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from kittymint (originally from kikuzu)
"初代iPodが出たとき、ぼくは、松下のSDプラットフォームチームにいた。当時、松下は本気でSD-AUDIOを開発していたので、iPodは正直、おどろいた。松下などのSD陣営はデータが消えにくく、著作権保護が可能なSDカードとその周辺の開発で、すでに数百億円以上つっこんでいた。他社と調整してSDMIなどの世界標準規格もたくさん作った。すごい時間とカネをかけて著作権保護と暗号化と静電気に強いカードとフォーマットを開発していた。その前に出したスマートメディアやMMCが静電気に弱く、データが消えることが多かったからだ。一万回SDカード抜き差しテストなどが普通に行われていた。もちろん、メモリースティックも同様の状況だったと思う。
だから、ハードウェア担当たちは、急に出た初代iPodの発表を聞いて、びっくりした。「ハードディスクなんて、不安定なモノでどうやって、データを消えないようにしとるんや?加速度センサーで衝撃や落下を事前に検出してシークをはずしたりしとるんか?その割には安すぎるし、それでデータ保護も完璧にはでけへんやろし…」 iPodの発売日、ハードウェア担当たちは、恐る恐るiPodを分解した。Appleはどんな衝撃対策やデータ保護対策をしているのだろう…どんな未知のテクノロジーを使ってユーザーのデータを保護しているのだろうか?結果は…iPodの中に裸のハードディスクがゴロンと入ってるだけだった。加速度センサー?そんなものは微塵も無かった。衝撃対策は、ゴムみたいな何かを挟んでる以外は何もしてなかった。「データは消えても知らん」という設計思想だった。実際、iPodはデータが飛ぶことがあった。iTunesも著作権保護がグダグダで、国内メーカーがこぞって進めていた「自称」世界標準の著作権保護規格であったSDMI規格も、100%無視されていた。CDに焼いたり、複数のiPodにコピーできたり、なんでもアリすぎて、これもびっくりした。
ハードウェア担当が言った。「こんなん、ウチではだされへんがな。」
だが…iPodは売れた。そして、iPodが売れるに従い、我々がこだわっていたことは一体なんだったのか、と思うようになった。"